本当に旨い和牛のお話

近江牛のウンチクその2

本当に旨かった牛肉の話

  

しゃぶしゃぶ肉

牛肉

>>近江牛ウンチクその1はこちら


ある日、近江牛のしゃぶしゃぶ用の牛肉を友達の家に黙って勝手に送り付けてみたら電話がかかってきました。
メッセージカードには、「今日行くから、鍋とご飯だけ用意しとくように」とだけ書いておきました。

友「何か届いてますけど?」
俺「うん。じゃあ野菜とポン酢とゴマだれ持って行きます」


・・・
友「あの、これ、箱とか見た感じ、高そうな感じしましたけど」
俺「そ、そうか」
友「あの、これ、見た目からしてエライことになってる気がするんですけど」
俺「うむ」
友「あの、これ、目茶目茶柔らかいんですけど」
俺「うむ」
友「あの、これ、エラく旨いんですけど」
俺「うむ」
友「あの、これ、、、多分、ものすごい高いお肉・・ですよね」
俺「グラム4000円ぐらい?」
友「ヒーーーさすがだーーーーメチャメチャウメーーーー」

と言っても信じられてしまうぐらい美味しかったです。
(実際はグラム1575円のお肉でした)



和牛カリー

高速道路のサービスエリアなんかでよく売ってるレトルトの「近江牛カレー」(1個800円とかそれぐらい)とかに余りいい思い出のない俺は、かね吉の「和牛カリー」も正直言って少し馬鹿にしていました。

ところが、

固定客も結構いるらしい?
熱烈なファンも結構いるらしい?
時々、何十個と大量に買っていく人もいるらしい?

などと聞いてから気になり始め、買ってみました。と言っても1個525円。この手のカレーにしてみればリーズナブルです。


・・・
えーと。ごめんなさい。

お肉屋さんの自分とこのカレーは違いました。舐めてました。

牛肉が旨いです。とにかく牛肉が旨いです。大事なことだからもう1回言います。牛肉が旨いです。

これを食べてしまうとそこら辺の市販のレトルトの「(自称)お肉が美味しいビーフカレー」もどき(500円とか600円とかする)なんかちょっと食べられません。違い過ぎです。



勿論、ルーも美味しかったですよ。お肉と絶妙にマッチしていました。
辛さは、万人向け(かどうか知らんけど)の中辛くらいです。


美味しかったので、ちょっと類似の他店で売ってるレトルトカレーも試してみよう・・

と思いました。


試してみたらまた何か感想とか書いてみようかと思います。

「A5」とか「A4」とか、牛肉の格付けと品質とお値段のお話

「A5」とか、「A4」「B4」とかいう、牛肉の格付けについて、色々な人からお話を聞いたり、色々調べたり、ちょっと勉強してみました。
以下のお話は、国産の黒毛和牛(=和牛)であることを前提としています。

本当に良いお肉とは何か?どんなものなのか?という、お肉屋さんにとっては究極めいたお題になってしまう為、まー色々と難しくてややこしいところはあるのですが、結論としては至ってシンプルなものになりました。


先にも書いた通り、A5だの何だのは、 社団法人日本食肉格付協会が定めた枝肉(牛一頭の生体から頭部や内臓などを取り除いた状態のこと)取引時の格付けの呼称です。
枝肉の格付けは、歩留等級と肉質等級で表示が決まります。

歩留まり等級

部分肉の歩留(牛一頭の生体から取れる枝肉の割合)が
A - 標準より良いもの
B - 標準のもの
C - 標準より劣るもの
とされています。
牛一頭の生体から取れる枝肉の割合が大きいほど等級が高くなります。
つまり同じ体重の牛でもたくさんの肉が取れる方が良いということです。

ということは、「A5」の「A」や「B」は、直接的には肉質に関するものではない、ということにもなります。

結論1:歩留等級はAでもBでも多分味は変わらない。


肉質等級

「A5」の5(数字)の部分は、「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉のしまりとキメ」「脂肪の色沢と質」の4項目で判断する数字のことで、これを肉質等級といいます。この項目からもわかるように、「肉質等級」とは、要するにほぼイコールで「見た目」のことです。肉質等級は、この4項目以外の要素は考慮されません。
等級の決め方は、上記4項目を1つずつそれぞれ5段階評価にして、「最も低かった数字」を肉質の等級としています。例えば、4項目の内1つだけ3で、あとはオール5、だったとしても肉質等級は「3」です。

これを聞いて、「へー、『5』って厳しいんだね。さぞかし高くてさぞかしおいしいんだろうな」と思った方、アナタは概ね正しいです。
「あれ、だったら、例えばA5よりも美味しい・・そうだな、B3くらいならあるんじゃないか?それってどのくらいの正確さと確率なんだろう?」と思った方、アナタはもっと正しいです。



Q. その格付けって誰が決めてる?

A. 農林水産省所管の公益法人である「社団法人日本食肉格付協会」の人が、中立の立場で行う全国統一の取引規格に基づいて行っています。いわゆるお役所的な公的なところですね。良くも悪くも。

Q. その判断基準って、本当に正しいの?良い(5とか4とか)と判断された方が美味しいって言えるの?

A. それが問題です。それぞれの基準となる各項目(「脂肪交雑」「肉の色沢」など)については、概ね、大きく外れることはないと思われます。
但し、あくまで「概ね」であって、その判断をするのも人である以上、その人に対して完璧な判断を求めるのは最初から間違ってます。
そして美味しいかどうかについては、概ねどころか「その傾向にある」ぐらいしか言えません。そこまでは誰も、何も保証していません
さらには、そもそもの判断に誤りもあるだろう上に、味を大きく左右する血統なども考慮されていません。
血統に至っては、肉質等級の評価基準(「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉のしまりとキメ」「脂肪の色沢と質」=ほとんど見た目の部分)よりも、味においての重要度は上であると言われるぐらいなのに、です。
このページに関心を持つほどグルメな皆さんなら、「見事な霜降りだったけど食べてみたら何かイマイチ?」のようなご経験、ありますよね?つまりはそういうことです。

例えば、A3とA5の枝肉が1000頭分ずつ、あったとします。
A5の牛1000頭と、A3の牛1000頭の2つに分けてそれぞれを平均すると恐らくは前者の方が美味しいだろう、これには異論はありません。
が、牛肉選定の達人がその2000頭の中から、格付けに捉われず美味しいと思えるものを上から順に1000頭集めたもの、にはどちらも逆立ちしたって敵いません。
味の上でA5を凌ぐA3も、A3より劣るA5も、たくさん存在しているのが現実です。

1) A5の牛1000頭
2) A3の牛1000頭
3) 選定の達人が美味しいと判断したものを上から順に1000頭

尚且つ、調達コストは、1)が最も高くなります。3)の方が、品質は良いのに安くなります。基本的にA5というだけで人気はあり、値段も高くなるからです。
「同じなのに安い」、ではなく、「明らかに良い上に、尚且つ安い」のです。この違いにどれだけの差が出るか、何となく想像できるでしょうか?
しかも、1)A5の牛1000頭の内、上から500頭、2)A5とA3の牛500頭ずつの内、上から500頭、としても結果はそれほど変わりません。むしろ、その500頭を選ぶ人によって結果は大きく変わってしまいます。

ここに、精肉業者によって差が出てくる最も大きなポイントがあります。


さらに更に、枝肉(牛一頭から頭部や内臓等を取り除いたもの)で買い付ける精肉店の場合、店内で部位ごとに捌いて分けるのですが、その時に、「この牛のこの部分は最上級」「この牛の大部分は素晴らしいけどこの部分は大したことがない」というような場合がたまに出てきます。
こういった精肉業者の場合、仕入値段の高い順に機械的に高い値段を付けるという訳にはいきません(それをやると、消費者にとれば、同じお店の同じ価格の牛肉でも買う度に品質が変わって大変です。そうなるとお店の信頼度もへったくれもありません)ので、大まかに言うと、良い品質のものほど良い値段を付けるということになります。A5だったから、或いは高かったから高い値段を付ける、という訳にはいかないのです。
この、店内での選定・価格設定という作業には、「この牛は『A4だったかA5だったか』」などというものは、1つの情報として参考程度にはしますが、例えば「この価格の牛肉はA5限定」などとして販売している場合以外には、余り眼中にありません。常に、品質の安定と、良いものほど高くなる、ということを原則に行われます。(困ったことに、品質の安定と価格との比例を真面目に律義に行う場合においては、そういった「A5限定」などの但し書きは時には邪魔にすらなり得ます)
この「店内での選定と価格設定」は余り目立たないところなのですが、精肉店の腕の見せどころの1つたり得ます。


結論2:本当に美味しいお肉が食べたければ格付けに捉われ過ぎてはいけない。(むしろ無視するぐらいの勢いで)



余談:未経産の雌牛

他にもよく言われるのが、メス牛に限るとか、処女牛でないと、とか、ですが、この際はっきり言っておきます。そんなこたあありません。
これも、確かに、「全体としての傾向」までは否定しません。少し前(10年とか、それ以上です)まではその傾向が今よりも強かったこともありました。
では全てにおいてそうかというと、とんでもありません。去勢牛でも雌牛より美味しいものはいくらでもあります。
全体としてそうなのですから、個別となると、雌牛を上回る去勢牛もその反対も、今や探さなくてもあるぐらいになっています。
最近の牧場の生育技術はエライことになっています。これは、去勢牛でも雌牛に負けないようにと必死の研究と努力が日夜行われた成果の一つと言えます。牧場の皆さんの、牛の餌から環境から何から、そのDNAレベルまで考えた細やかな気遣いや心配りには本当に恐れ入ります。

今の時代、「雌牛である」ということ、もしもそれに拘るのであれば、それは品質に拘っているのではなく、雌牛であるという「ブランド」に拘っているのでしょう。
他者との差別化を図りたい、良いものを扱っているとアピールしたい、そういうアピール自体が目的であって、品質としての目的ではなく、表面的商売的な意図でしかないと思います。(そしてそれは、間違いなく価格に転嫁されています)

「良い牛を求め、選定していたら結果として雌牛ばかりになった」というのならそれは理解できなくもないですが、最初からそういう「縛り」があっては本当に良い牛肉は選べないでしょう?

結論3:今や雌牛とかこだわる方がどうかしてます



総合的に結論:

これらがどういうことを指し示しているかというと、例えば、ウチはA5かA4、未経産の雌牛しか使いません!などというのは、私は正しい目利きにいま一つ自信がありません、と宣言してるようなものです。

品質よりも「聞こえ」や「表面的なブランド優先」というのは、そういうことでもあります。
事実、当のそういうお店の人達ですら、A4やA5などの格付けを絶対視・盲信しているかというとそんな筈もなく、「その中でもなるべく良いものを」、と頑張ってられます。つまりはそういうことです。

品質はそこそこでも良いからとにかく高いものを、と考えた時は、どうぞ、A5にこだわってください。未経産の雌牛にこだわってください。
牛肉のことは何もわからない人がどの店が美味しいなどの情報が何もない中、購入するのは今回の1回きりで良い、ハズレを掴まされる確率が低いもの、と考えた時には、A5やA4、雌牛にこだわっても良いと思います。
粗悪な業者に当たってしまわない為にも、それはそうされた方が賢明だと思います。

但し。高いですよ。モノの割に
でもそれはリスク回避料だから仕方ないぐらいのつもりで、割り切って購入しましょう。
その「リスク回避料」とは、「A4やA5に限定すると、質の悪い肉をなるべく仕入れないで済む」というお店にとってのリスク回避料でもあって、そしてそれは価格に転嫁されている、ということです。

でも、本当に良いものを低価格で、というより、同じ価格でもより品質の良いものを、と考えた時には、B4もA3も去勢牛も当然のように選択肢に入ってきます。何度も言いますが、A3でもA4やA5よりも品質の良い(=美味しい)ものはたくさん存在するからです。


だから、目利きの達人さんは昨今の格付け至上主義みたいな風潮には余りいい思いは持っていないようですし、その格付けを必要以上に重視するきらいのある、例えば「近江牛」生産・流通推進協議会 のような存在にも疑問を持っているようです。
お客さんがA5かA4しか使わないお店が好きならそれを止めることはしないし、それ自体は一向に構わないが、それを推進することに協力までするのはどうなのか? ウチはもっと質の良いものを提供しているのに?という思いは拭い切れない、そうです。

勿論、格付けに捉われないということは諸刃の剣でもあって、選定を間違うととんでもないこともなります。
例えば、余り良質でないお肉を販売している業者さんは、当然の如く、格付けには捉われていないでしょう。
消費者から見た時に、そういう格付けのような客観的評価基準がなければ、どちらがどうなのかよくわからない、という問題もあります。


格付けに捉われないということは、より差が出やすくなるということでもあります。
職人さん的には、そうやって差が出ると、確かに粗悪な業者も入ってきてしまうが、結果としては、正しい競争、真っ当な評価、価値判断がなされる為、その方が良いのではないかと思うこともあるようです。
ただ、以前のBSE騒ぎや偽装問題で、真面目にやっている人間にとっては迷惑でしかなかった"とばっちり"を受けてしまったのもまた事実で、職人さん達の中でも、どのような形態がベストであるのか、結論は出ていないようです。
ただ1つ、真面目に良い品質のものを適正な価格で提供しているところが正しく評価されて欲しい、そういう世の中であって欲しい、それを願うばかりです。


職人さん達は、本当にいいものを低価格で、いいものでもより安く売る、という視点よりも、どちらかというと(実は同義語なんですが)、同じ価格でもより品質の良いものを、と考えます。

例えば、A4かA5しか使わない、雌牛しか使わないと宣言しているあのお店と、宣言はしていないけど評判が良いようなお店で、同じ価格の1人前○千円のすき焼きやしゃぶしゃぶを食べ比べてみてください。
例えば、同じ100グラム1500円の近江牛肉を違うお店で買って、食べ比べてみてください。


どちらがより美味しいか。どのお店が最も美味しいか。どうしてそんなに差が出るのか。
これだけ書いておいて、結局、月並みな結論になってしまいます。


最終的な結論:本当に美味しいお肉を知るには自分で食べてみること。それしかありません。



おまけ:精肉店の自社牧場

自社牧場ですか。生産から一貫して管理ですか。確かに聞こえはいいです。
でも、A3もB3も、もっと下の牛肉も出てしまう自分の牧場で一体どれだけのコストがかかるのか?考えるまでもありません。それは価格に転嫁され、つまりは同じお値段でも質はあちらの方が上ということに繋がります。
事実、全てのお肉を自社牧場で賄っているお店を私は知りません。コストの問題が圧迫して全てはできないんですね。大したことのないお肉でもえらく高いことになってしまいますから。結果として、殆どのお店が、何割かだけの使用となっています。
ちょっとアレなところになると自社牧場を謳っていながらそれを使っているのはほんの1割2割程度のところもあります。まぁ、嘘という訳ではないのですけどね・・それってどうなんだろうとは。そういうのって、やはりアピール目的でしかないんですよね。勿論、お店ではそのコストは「アピールの為のコストである」と割り切ってられますよ。
ちょっと微妙な話ですが、牧場が直営しているお店で出されるのなら大部分が自社のものだと思います。反対に、精肉店が牧場をやっている、ようなところなら大体がこのパターンになります。
基本的に、牛を育てる技術と、いわゆる目利き・選定の技術は別物ですから、「自分のお店で使う牛を育てる」という視点ではなく、「それとは別に牧場をまるまる1つ経営する」ぐらいのつもりでやらないと、色々と無理があるのでしょう。

ということで、精肉業者にとって真に必要なのは、牛の育て方の技術ではなく、信頼出来る牧場と、より確かな選定の技術なんだろうと思っています。

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